Yuri Suyama

1-43-12
Tomigaya, Shibuya-ku
Tokyo 151-0063, Japan
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音楽家の蓮沼執太さんがアサヒ・アートスクエアを拠点に、一年間(2012年2月〜2013年2月)毎月公開でスタディ(レコーディングや撮影)をして、そこから派生する展覧会を行うプロジェクト「蓮沼執太のスタディーズ」。私はそのロゴタイプと、毎月行われる公開スタディのチラシを担当します。

 蓮沼執太という音楽家は、個々のプロジェクトの中で、自分に媒介にして、実験を楽しむかのように、多様な環境と人脈の中で、多様なアウトプットを行ってきた(と思う)。今回のプロジェクトも、レコードのための公開録音でもないし、ただのライブでもない。よく分からない。だから、スタディーを通して最終的に行われる展覧会には、できるだけ様々な(普段蓮沼さんのライブを見たことがない人も、アサヒアートスクエアに行ったことがない人も)お客さんを呼びたいと(そうなることが今回の「告知」の成功だと)思った。しかし予算はない(大体いつもない)。ただ「時間」はある(なら映画を観たい)。一年間通してプロジェクトを進めるのだし、その「時間」を使って広報することができないものだろうか。
 そもそも、私はここ最近チラシなどを大量に刷って、不特定多数に撒いたりする(公演折り込みをしたり、美術館や公共施設に設置したりする)ことに、どれほど効果があるのか懐疑的だった(時々たくさん余ったりするし)。もちろん、偶然チラシを手に取って展覧会やイベントに赴く方もいらっしゃるでしょう。だとしたら、そのチラシを「偶然」手にとる「行為」そのものを作れないだろうか。

 今回のプロジェクトは、予め一年間のスケジュールが決まっていたので、翌月の公開スタディの日時と蓮沼さんの短いテキストを記載したチラシを100枚ほど束ね、日めくりカレンダーのようにして(全て同じ日付の日めくりカレンダー)、それを毎月都内数カ所に設置することにした。チラシを「撒く」のではなく、チラシを「取りに来て(捲って)もらう」。
 場所と枚数を限っているので、即効性(チラシを製作した翌月の公開スタディに女の子が大挙して押し寄せたりとか楽しそうなこと)はないかもしれないが、わざわざ取りにいったり、自分で捲るという「行為」が介在することは、記憶の手助けになるだろうし(私なんかは展覧会の日時を忘れてよく見逃す)、持続性があると思う。何より、あとは一年間という「時間」がプロジェクトを導いてくれるだろう。

 ごく小さな音量でラジオが鳴っている。よくは聴こえないが、心惹かれる音だ。音の方へ歩くと、少しずつ音がクリアになっていく。私たちはそこまで歩いていくだろう。そこには、あなた(だけ)を待っているニュースがある。「良いニュースは小さいな声で語られる」(村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』)のだ。
 声を届けるのに、その音量を大きくすることはない。友人に手紙を書く時に紙やペンを選ぶように、その響き方、そしてどこで声を発するかに腐心すること。でなければ、空(くう)に浮かんだ音は「誰かの」メッセージにはならないと私は思う。そこに宛名がなくとも「これはあなたに宛てたメッセージだ」というメタメッセージが感じられたとき(そう複数の人が感じるわけだが)、それは初めてメッセージ足り得る。

 今後の日めくりチラシには、蓮沼さんだけでなく、様々な方のエッセイやイラストなども掲載予定で、そこにしかないフリーペーパーを取りにいくような感覚で、楽しんでもらえるようなコンテンツが待っております。どうぞお見知り置きください。


設置場所は、以下の都内五ヶ所です。

NADiff apart
UTRECHT NOW IDeA
VACANT
happa(青山|目黒)
アサヒ・アートスクエア


(「蓮沼執太のスタディーズ」の「告知」のためのステイトメント)